ディープな韓国
一人あたり GDP で日本を上回った国の、もうひとつの風景。その巨大な繁栄の陰には、いまも取り残された街がある。スラム、ガラクタ市場、韓国の西成、立ち退きと再開発に翻弄された村、廃墟。韓国高度成長の影に残された街を歩く。
【紹介】タルトンネ・チョッパン村・考試院・半地下・廃墟一人あたりGDPで日本を上回った国のもうひとつの風景韓国高度成長の影に残された街を歩く
九龍村 韓国最高ハイソタウンのすぐ側に韓国最低スラムタウン!!白砂(104)村 政府の強制移住によって生まれたソウル最大タルトンネがついに消滅!!峨嵋洞碑石文化村 日本人の墓を勝手に持ち出して作られた村が観光名所に!!永登浦チョッパン村 酒と小便の臭い漂う「韓国の西成」は、住民のアルコール依存が深刻化!!コンジアム精神病院 アメリカCNNが選んだ世界鳥肌スポットで、患者が描いた絵に戦慄!!清凉里集娼村跡 韓国屈指の色街の断末魔は、立ち退きを巡って罵り合い!!激安大衆食堂 メニューの大半が4000W以下!! 大学街の激安大衆食堂!!ソウル風物市場 朝鮮戦争後に発生した闇市をルーツに持つ韓国最大ガラクタ市!!大林洞チャイナタウン 中国朝鮮族の凶悪イメージからデンジャラスエリアに認定!?「スラム街系YouTuberインタビュー」「永登浦裏通り工場萌え絵巻」「物乞い」「タプコル公園裏激安食堂ストリート」のコラムも!
【前書き】貧乏旅行が好きだ。これまでアジアを中心に数えきれないほど海外に出向いたが、同行者がいない場合、大抵、拠点にするのは安宿。そもそも宿や食事にお金を遣うくらいなら、そのぶん体験の数を増やしたいタチで、お陰で50を過ぎた現在でも相変わらずバックパックを手放せない有様だ。そんな次第で、韓国でも事前に宿の予約など一切行わず、旅館や旅人宿などと呼ばれる安宿に飛び込みで泊まるのが常だ。ふらりと足を踏み入れた在来市場を冷やかしたり、映画やドラマの舞台になったスラムを散策したり、地元民がくだを巻いている、うらぶれた酒場で安酒をあおるのがせいぜいで、ギャンブルや風俗、高級食材などとは無縁だから、金などかかりようがない。その土地ならではの「土着」を味わうのが我が旅の醍醐味なのだ(お金を遣うのは交通費や博物館の入場料くらい?)。旅で味わうプレミア体験の軸に「人」を置いている。食事一つをとっても、職人の技巧を尽くした贅も悪くはないものの、その土地に根を張った大衆の日常が沁み込んだ素朴な味や、従業員との気の置けないやり取りこそが、庶民の目線ゆえに堪能できる人情味だ。ローカルマーケットの多くは、商品に値札はついておらず、フンジョン(흥정)と称する店主との丁々発止のネゴシエーションで割引を勝ち取ることができるが、免税ショップではそうはいかない。筆者が常泊するモーテルでは受付が筆者の顔を覚えてくれている。部屋で寛いでいると不意にチャイムが鳴り、ドアを開けると、アイスクリームを手にしたおじさんが笑顔で立っていたりする。これがたまらない。以前泊まった旅人宿では、宿主がビールとスナック菓子を振る舞ってくれたこともあった。韓国ではこうした「情」に触れる機会が多い。映画やドラマを契機に存在を知り興味をかきたてられたタルトンネや、板子村と称されるスラム、チョッパン村と称されるドヤ街を実際に訪れたのは、その土地で暮らす生活者のプリミティブな日々の軌跡を目に焼き付けたかったからだ。戦火を逃れ人が住みづらい丘陵地を開拓して、近辺に転がっていた板切れや石で掘っ立て小屋を建てて暮らした先人の魂は、現在でも形を変えて受け継がれている。貧困は人が生きていく上での切実な問題だが、過酷な環境の中でも逞しく適応し、生き抜く生命力には心を打つ情動がある。廃墟の魅力を知ったのは以前、出版社に勤めていた時に携わった雑誌で連載ページを担当したのがきっかけだった。価値なきものとして打ち棄てられた建造物が、存在理由を失い朽ちることで存在感を放つ様に心を揺さぶられた。韓国の廃墟でも、その場所に関わった者たちの痕跡には時代とリンクしたドラマがあり、時に真偽不明な噂や怪談などと、ないまぜになって歴史上に彼らが存在した証として今に語り継がれている。韓国語で「サグリョ(싸구려)」という表現がある。日本語に訳すと「安物」「二級品」。質の低いB級品といった見下したニュアンスで使われているが、光の反面としての影に人は引き寄せられ、B級ゆえの深い味わいがある。本書では、普段メディアで顧みられることの少ない赤裸々な「サグリョコリア」を紹介する。第1章では、韓国全土で数少なくなった貧民街を取り上げている。昨今はYouTuberなども訪れ世界的に知られるようになった韓国最大スラム九龍村や、ソウル最後の秘境と言われた今はなき白砂村を始めとする個性派タルトンネ、ホームレスが集団居住するターミナル駅真下のテント村、韓国シャーマン専門バラック街など、生き残るために異形な適応を果たした貧民街を紹介。第2章では「宿」がテーマ。旅館・旅人宿・サウナ・漫画喫茶など、世の観光客が定番とするホテルとは一味違った、百花繚乱な韓流格安宿泊施設を筆者自ら体験宿泊ルポ。また、“韓国の西成”と称される永登浦他、主要なソウル市内の簡易宿泊所「ドヤ」街チョッパン村の知られざる内部を探る。第3章は、廃墟編。映画にもなった韓国3大凶家の一つ「コンジアム精神病院」を始め、朽ちた高層リゾートビル群聳える韓国最古のスキー場跡地、朝鮮労働党舎、反共会館、連続殺人犯の住んでいた廃屋など、プライスレスな異色廃墟がてんこもり。第4章はグルメ・ショッピング・外国人街編。貧民街の食堂制覇、金欠老人御用達せんべろ酒場、ワンコイン軽食等、特選激安グルメ22連発、あらゆるものが安い韓国最大ガラクタ市に、偽物本物入り乱れる輸入古着市場、異国の安い労働力が生んだ外国人タウンなどなど、規格外のお役立ち情報満載のタウンガイドをお届けする。ディープで、チープで、それゆえに愛すべしコリアの魅力が存分に詰まった1冊、とくとご堪能あれ。