ロックグラスの第六弾のデザインと同じ型を製作しようと思い、調整に入りました。
飲料の色をしっかり楽しめるデザインというのが基本ベースの作品です。
設計図なので、見せられない部分もありますが、なかなか企画書段階の物は興味深いと思うので載せておきます。
カットで色を透かす方法も他のデザインでやりましたが、カットの上からだと少しモザイク状に見えるということもあり、真に飲料の色を楽しめる工夫をしなければと思いました。
モザイク状じゃなく、完全にクリアに見せるには
・平でグラスの側面を平らに擦る
・カーブのかかった刃で側面を丸く擦る の2つの方法しかないと思いました。
その2つの方法のメリットとデメリットを洗い出し、比較検討した結果、平(ひら)という平らな刃でグラスの下部を大きく擦ることにしました。
デザインがオリジナル寄りになり過ぎないように上部は伝統的な文様である菊繋ぎをぐるりと一周削り、輪で締めることで伝統的な切子らしさと高級感を演出しました。
またマス目に沿って完全に帯状にカットするのではなく、平の透かしの谷間に菊繋ぎの交点を少しはみ出させて、一体感が出るように調整しました。
色被せの部分をほとんどクリアにしてしまう分、作業工数が他の製品よりかなり多くかかっております。
値段は比較的高くなっておりますが、それに見合うだけの価値はあるかと思います。
底菊および菊繋ぎの菊は長寿、無病息災、邪気払い、高貴、高潔などの意味が込められた非常に縁起の良いものです。
菊繋ぎが入った作品はどれも高級感が感じられます。
底は16枚の葉を持つ底菊をカットしております。
平の部分から透かして見ると、底が光の虚像で浮かび上がって二重に見えるという細工をしております
黒丸で囲ったところが虚像で浮かび上がって見える底の模様。
グラスの中を削っているわけではありません。
菊繋ぎは努力だけではカットすることの出来ないセンスの部分も必要なカットです。
非常に難しいこの文様は経験を積んできた江戸切子職人でないとカットすることができないので、その証明でもあります。
高級感漂うこの特別なロックグラスを自分用、ギフト、退職祝い等でぜひご検討頂ければ幸いです。