祖国の文化的危機にあたり鉄槌を下すべく恐怖と諦念をもって学芸と教養との霊廟として大成を掲げた音楽雑誌。
特集の高橋徹也論からカラオケのデータで見るポピュラーミュージック、テレビ番組と音楽から、ヨルシカ論などパワーを感じる記事が満載ッ!
『白旗』発刊に際してクリエイティブ顧問ズ
第二次世界大戦後の連敗は、おまえたちがやったふりをし続けていた闘争の敗北であった以上に、おまえたちの文化力の不戦敗であった。おまえたちの作品が戦争に対して如何に無力であり、本当に単なるあだ花に過ぎなかったことを、私たちは身を以て体験し痛感した。ポピュラーミュージックの表現にとって、戦後八十年の歳月は決して短すぎたとは言えない。にもかかわらず、ポピュラーミュージックの伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層として自らを形成することにおまえたちは失敗して来た。そしてこれは、各層への文化普及をその場のノリでやってきたくせに、なぜかクリエイターぶる自分たちの責任でもあった。一九四五年以来、一九五二年以来、一九五六年以来、一九六八年以来、一九八九年以来、一九九五年以来、二〇〇一年以来……おまえたちは再び振り出しに戻って、第一歩から何かをやり直すべきなのではないかという妄念に取り憑かれてきた。これは大きな不幸ではあるが、反面、そのせいで混沌・未熟・歪曲の中にあった我が国の文化に秩序と確たる鉄槌を下すためには今が絶好の機会でもある。クリエイティブ顧問ズは、このような祖国の文化的危機にあたり、過去を顧みても再建の礎石がどこにもないことへの恐怖と諦念をもって出発したが、ここに創立以来の念願を果すべく白旗を発刊する。これまで刊行されたあらゆる楽曲の長所と短所とを検討し、古今東西の不朽の名曲を、大良心的編集のもとに、ぼちぼち廉価に、そして時に愚にもつかない購入者特典を付けたりして、多くのひとびとに提供しようとする。私たちは自らが百科全書的な知識のジレッタントを目指しかけたことを棚に上げ、あくまで祖国の文化に秩序と再建への道を示し、この雑誌をクリエイティブ顧問ズの栄ある事業として、今後興味が持続する限りに継続発展せしめ、学芸と教養との霊廟として大成せんことを期したい。どこにいるのかわからない音楽好きの愛情ある妄言と支持とによって、この絶望と抱負とを完遂せしめられんことを願う。二〇二二年十二月凶日
【目次】●アントニオ・カルロス・序文 / 小林青空●インタビュー Don't Trust Ober 30!? #1 JUWHAN(シンガーソングライター)●【論考】 未解決事件:1998年の高橋徹也 /古い大地●【連載】 データで見る音楽第二章 カラオケ再生ランキング編 / lip_of_cygnus●【論考】ダブ・ポエトリー宣言 / 石橋直樹●【連載】 PLAY A DAY忘備録 #1滑琴 / おおしまたくろう●催事にこだわり / 模擬響平●ヨルシカ試論(1):君を思い出す油冷の現在地 / 小林青空●編集後記