紹介
政府の監視も、グーグルのアルゴリズムも、企業によるターゲティングも、さらには法律の手すらも及ばないインターネットの暗部=ダークウェブ。「ネットの向こう側」の不道徳な領域を描き出すポスト・トゥルース時代のノンフィクション!!
知られざるインターネットの暗部――ダークウェブ。その領域の住人たちは何よりも「自由」を追い求め、不道徳な文化に耽溺しながら、「もう一つの別の世界」を夢想する。
本書ではアメリカ西海岸文化から生まれたインターネットの思想的背景を振り返りながら、ダークウェブという舞台に現れたサイトや人物、そこで起きたドラマの数々を追う。「自由」という理念が「オルタナ右翼」を筆頭とした反動的なイデオロギーと結びつき、遂には「近代」という枠組みすら逸脱しようとするさまを描き出す。
目次序章 もう一つの別の世界分断されたインターネットフィルターにコントロールされた「自由」「唯一にして限界なき空間」日本での議論インターネットのもっとも奥深い領域
第1章 暗号通信という「思想」ダークウェブとは何かイメージと実情国家安全保障局との攻防革新的な暗号化技術の誕生「数学」というもっとも美しく純粋なシステムによる支配
第2章 ブラックマーケットの光と闇「闇のAmazon」「シルクロード」の革新性思慮深きマーケットの支配者DPR逮捕の内幕インターネットの二面性
第3章 回遊する都市伝説殺人請負サイトQ&A顧客情報流出事件人身売買オークションスナッフ・ライブストリーミング
第4章 ペドファイルたちのコミュニティ児童ポルノの爆発的な拡散フィリピンのサイバー・セックス・ツーリズムハードコアな情報自由主義者知識共有と意見交換おとり捜査その後の議論
補論1 思想をもたない日本のインターネット根付かない「シェア」精神アングラ・サブカルとしての消費アメリカのインターネットが反体制的な理由
第5章 新反動主義の台頭フェミニスト・セックス・ウォーズ良識派への反発哲学者、ニック・ランド「人類絶滅後の世界」拡散する実験、そして崩壊暗黒啓蒙(ダーク・エンライトメント)恋愛ヒエラルキーの形成と闘争領域の拡大「男らしさ」に対する強迫観念
第6章 近代国家を超越する既存のシステムからの脱出排他性を孕む結論ブロックチェーン上のコミュニティバーチャル国家が乱立する未来
補論2 現実を侵食するフィクション冥界としてのサイバースペースロコのバジリスク現実認識を変容させる「ネタ」が本当に
著者プロフィール木澤佐登志 (キザワサトシ) (著/文)木澤佐登志(Satoshi Kizawa)1988年生まれ。中央大学経済学部国際経済学科卒。ブロガー、文筆家。インターネット文化、思想など複数の領域に跨った執筆活動を行う。サブカルチャー批評ZINE『Merca』などに寄稿。また、kzwmn名義で『シックスサマナ』にて「ダークウェブの歩き方」を連載。