本書初版の出版から13年を経て、食品の品質・衛生を取り巻く状況は大きく変化している。安心を提供する「食品表示」においては、アレルギー表示および表示レイアウトの改善、栄養成分表示および加工食品の原料原産地の表示の義務化など行われた。安全面では2018年に食品衛生の改正が行われた。改正内容は大きく分けて7項目に及ぶ。中でも注目すべきはHACCPの制度化と営業許可制度の見直し・届出制度の創設であろう。HACCPの制度化は、食品製造業のみではなく、食品保管業や食品運送業も対象になるが、企業規模に応じて「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(製造従事者50名以下の企業)に分類され、2021年6月に実施されることとなった。
一方、国際的には2020年9月にCodex委員会が「食品衛生の一般原則」(CAC/RCP1-1969)の見直しをおこなった。HACCPの7原則12手順に大きな変更はないが、危害分析の重要性(重要な危害要因の特定)が強調された。また、「食品安全文化」の概念(確立)が導入されている。
上記のような背景の基に改訂版を発行するに至ったわけであるが、本書は大学で食品について学んでいる学生を対象に作成したものであるとともに、企業で食品管理・品質保証に携わっている方々にも活用して頂けるものである。初心者にわかりやすく解説することを心掛けた。本書が、わが国における食品の品質確保の一助になれば幸いである。
■内容
- 第1章 食品の品質管理の仕事とは …HACCP の制度化の時代を迎えて
1.1 品質とは何か
1.2 品質管理とは何か
1.3 リスクマネジメント
1.4 工場点検における品質管理
1.5 商品仕様書の管理
1.6 クレーム・申し出の管理
1.7 開発時における品質管理
1.8 消費(賞味)期限の設定
1.9 製造環境の点検・検査
1.10 従業員の教育・訓練
1.11 そ の 他
1.12 食品衛生法等の改正の概要- 第2章 食品製造の流れと品質管理
2.1 食品製造の準備段階
2.2 品質管理のポイント- 第3章 食品の品質にかかわる工場点検とその方法
[?] 食品製造プロセスに沿った工場点検
??3.1 点検の3 要件
??3.2 点検の2 つの側面
??3.3 点検者の姿勢
??3.4 点検者と被点検者の関係
[?] 製造環境にかかわる工場点検
??3.1 衛 生 管 理
??3.2 環境・リサイクル- 第4章 HACCP と第三者工場点検
4.1 HACCP と食品安全マネジメントシステム
4.2 HACCP システムのハザード(危害)について
4.3 品質管理の種類について
4.4 ハザード管理手法の例
4.5 品質管理とは、ばらつきの管理である
4.6 「守る」では無く、「攻める品質管理」の業務の進め方
4.7 第三者による工場点検- 第5章 食品安全マネジメント手法
5.1 食品安全認証制度を取り巻く動向
5.2 マネジメントシステムとは
5.3 食品安全認証制度の骨格となるHACCP
5.4 国際的な食品安全認証制度の事例- 第6章 職場の5S と衛生スキルアップのための社員教育
6.1 5S と は 1
6.2 5S 活動の見える化
6.3 教育訓練- 第7章 品質管理における必要な各種検査方法
7.1 官 能 評 価
7.2 検査の目的と精度
7.3 微生物検査
7.4 清浄度検査
7.5 異物検査
7.6 アレルゲン検査- 第8章 現代の食品流通とトレーサビリティ
8.1 トレーサビリティとは
8.2 トレーサビリティ導入の目的
8.3 トレーサビリティの基本要件
8.4 トレーサビリティシステム導入の目的と期待される機能
8.5 トレーサビリティが有効に機能するために
8.6 トレーサビリティに期待される役割- 第9章 食品表示の理解のために
9.1 食品表示法の施行までの流れ
9.2 食品表示法における改正のポイント
9.3 遺伝子組換え表示の改正
9.4 食品添加物の表示方法見直し
9.5 食品関連事業者に求められること- 第10章 リスクアナリシスとコンプライアンス
[?] 我が国の食の安全を確保するための仕組み
??10.1 リスクアナリシス(リスク分析)
??10.2 リスクアナリシスにおける国の行政機関の役割
[?] コンプライアンス?食の安全を取り巻く法制度
??10.1 コンプライアンスの意味と意義
??10.2 コンプライアンスの基軸となる法令理解
??10.3 食品関係法令について