いつの時代にも、新しいものは"なんだかわからないもの"として登場する。「見えるものはみんなひとのものだよ。」「うん。」「見えないものは、僕らのものだよ。」(「デザインを終えて」より抜粋)90年代頃から自然発生した、珍スポット、廃墟、工場やダムなどのドボク遺産など、観光地以外を観光するというオルタナティヴな旅の愛好家たちによって、一種独特のシーンが形成されました。マニアックで、オカルトで、廃で珍なカルチャー。このシーンのなかから出てきた、知る人ぞ知る不定期刊行マガジンの『八画文化会館』は、2010年5月に活動開始し、6年間で本誌4冊と、叢書6冊を発行してきたインディペンデントマガジンです。土地や時代からズレても生き残り不思議な魅力を放っている物件をめぐる「終末観光」というテーマを掲げて活動してきました。本書は矛盾や不純、そしていつも「なんだかわからない」思いを抱えながら本をつくってきた制作の舞台裏について赤裸々に明かした、本邦初の公式ファンブックです。アートブックとしても楽しんでいただけるように、10年に渡って日本全国の街角から採取した風景の中でも、とくに路上からはみ出している「SEX・ニセモノ・交通安全」の写真をピックアップし、コラージュアートブック風に構成しました。アダルト産業大国の日本では街並みにおいても許容されてきたエロ文化の残滓、「アカンやつ」と言われても各地に発生しつづけるニセモノ、交通安全を祈りながらもドライバーや通行人の目を惹きすぎて目立ち、逆効果になっているんじゃないかというような矛盾を抱えた交通安全オブジェ。これらの路上に存在した風景写真を、今もっとも注目すべき気鋭の若手エディトリアルデザイナーLITTLEBEACH Studioの小磯竜也さんによる、斬新なコラージュアートでお楽しみ下さい。紙の本を愛する人へ、そして絶滅危惧種のように貴重な八画文化会館ファンの皆様へ贈ります。限定1000部のシリアルナンバー付きでの発売です!◆目次◆■第1章 AVメーカー事務所の片隅から。新宿のはずれ、大久保の雑居ビルにて/気鋭のイラストレーター小磯竜也との出会い/自由の矛盾と金儲けの不純■第2章 28歳、私「あっち側」へ行ってきます。酒井竜次の4年ごとに負けるストーリー/ジュンク堂新宿店「ふるさとの棚」の無責任編集/『愛知県漂流』に揺さぶられて/赤信号を渡って『八画文化会館』へ■第3章 私の答えはただひとつ、続けること。「ない」ものを数えて「ある」ものまで失くす毎日/とにかく続けること□解説 山内哲也◆著者プロフィール◆石川春菜:編集者、ライター。1982年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部、文芸専修卒業。ジュンク堂書店池袋本店にアルバイトで2年、同新宿店に正社員として5年勤務。6年目に転職し、『八画文化会館』編集長を務める。HP:八画文化会館◆デザイナープロフィール◆小磯竜也:アートディレクター。1989年、群馬県生まれ。東京都在住。東京藝術大学美術学部、絵画科油画専攻卒業。フリーのアートディレクター兼グラフィックデザイナー兼イラストレーターとして、主に広告物や書籍などのデザイン及びディレクション、プロデュースを行う。『ジャポニカヒップホップ練習帳』サイプレス上野(双葉社)や、『名作漫画誌 品格vol.2』(シカク出版)の装丁を手掛ける。HP:LITTLEBEACH Studio 小磯竜也 OFFICIAL SITE