学際的な視点からバーチャル文化を取り上げる、今をつなぐバーチャル文化普及マガジン『Hukkyu』創刊号、特集はVtuber✕民俗学。多くのVtuberへのインタビューやファン、運営会社など取り巻く情況、民俗学研究者が語るVtuberの見解、変わり続けるVtuber文化を民俗学的見地から留める試みの雑誌。
【紹介】Hukyu(ふきゅう)は、バーチャル文化普及史マガジンです。
21世紀以降、私たちを取り巻く文化は想像以上に急激に変化し続けています。
かつて、農耕文化の営みが都市民俗に変わっていったように、インターネット上でも様々な文化がリアルタイムに生まれ、増殖し、消滅しています。
本誌Hukyuでは、VTuberやメタバースをはじめとしたバーチャル文化の普及の過程を記録することを目指し、ありのままを多角的に識る民俗学(及び考現学)の視点でバーチャル文化を支える様々なプレイヤーにインタビューを行いました。
VTuber当事者はもちろん、VTuberを対象にした研究者・VTuber事業を展開する起業家・VTuberを担当するイラストレーター・VTuberの動画を作る切り抜き師など、さまざまな視点を通してバーチャル上の民俗を立体的に捉えていきます。
【目次】・序文 Hukyu創刊にあたって・巻頭鼎談「バーチャル文化×民俗学研究を語りつくす」・コラム 第一回VTuber川柳大賞・インタビュー企画①「バーチャルフィールドワーク」・コラム 民俗学入門におすすめなコンテンツ20選・インタビュー企画②「当事者インタビュー」・コラム ゾンビ先生と行く、ぽこピー聖地巡礼・インタビュー企画③「多角的視点によるインタビュー」・巻末資料「VTuber俗語集」・特別付録「ヘアピンまみれペーパークラフト」
【前書きなど】Hukyu序文
21世紀以降、私たちを取り巻く文化は想像以上に急激に変化し続けている。
かの民俗学の父・柳田國男が闊歩した平地の都会や農村は、鉄の車が様々な燃料を元に動き回り、道行く人々は異世界につながる四角い窓を持ち歩いている。そしてかつての農耕文化の営みが都市民俗に変わっていったように、インターネット上でも様々な民俗がリアルタイムに生まれ、増殖し、呼吸している。
民俗学とは、伝統的民俗文化の回帰という、過去とのノスタルジックな伝言ゲームを知り極める学問の眼差しである。しかし、それだけが目的ではないと私は考えている。語り継ぐことの先には、現代の日本人のごくあたり前な日常生活や考え方が存在するのである。
VTuber文化とは、日々広がり続ける「バーチャル」の世界を中心に様々な世界で活動する人を中心として、近年では地上波放送にも出演するVTuberの方が登場するようになった、比較的新しい文化である。
本誌『Hukyu』は、今を生きる私たちの社会生活や未来に対し、学術的な成果物や結論よりも、継続して今後も様々な学術の視点と文化の学際的な普及史を取り上げていきたいため、ありのままを多角的に識る民俗学(及び考現学)の視点で一つの楔を用意する雑誌としての位置づけを目指している。
編集にあたっては、民俗学に興味のある方やVTuberに関心のある方に相互的な知識と関心を持っていただくことを目指し、可能な限り平易に記述することに努めている。
また全体の構成は、まず、1部ではバーチャル文化の民俗学のあり方を民俗学教授・Youtuber・VTuberの視点で深めた。2部では、ヴァーチャルな世界でのフィールドワークとして、【当事者】のとらえた「民俗的事実」に目を向けている。続く3部からは、そしてより多角的に【運営】【ファン】【切り抜き師】【ママ絵師】【研究者】【批評家】などのVTuberに対する相互的な作用を鑑みた民俗学の視点を取り入れ、それぞれの人のとらえたVTuberに対する表面的部分から、ありのままのひとつの今の捉え方を知り、いつかの誰かの役に立つ見方を「みつける」一つの手立てを用意した。
より深く知りたい場合は、巻末の「VTuber俗信用語集」を利用していただきたい。
この雑誌には、取材させていただいた方々はもちろん、これまでのVTuber文化にかかわってきたファンの皆様、編集に携わっていただいたすべての方々がいてこそ形を成しえたものである。ここに感謝の意を表したい。
また、本誌はありのままの今を「つなぎ」留め置くが、その後の変化や今ある他の見方を否定することはしない。掲載されるすべての人々の視点は導き出された「答え」であり、それぞれの「可能性」でもある。
ありのままのひとつの今の捉え方を知り、いつかの誰かの役に立つ見方を「みつける」一つの手立てとしてこの雑誌が、手に取った読者のバーチャル民俗文化を探訪する良き相棒となり、残っていけば幸いである。
Hukyu 編集長諸星めぐる
版元から一言雑誌「Hukyu」は、インターネットで普及する文化の「今」を紙面に留め、より多くの人々や次世代に届けることを目標としています。本誌の特集は【VTuber×民俗学】。これまでVTuberや民俗学に親しんできた方々だけでなく、「VTuberってなに?」、「民俗学って難しい?」と感じられている方々も是非お手にとっていただけますと幸いです。
【著者】諸星めぐる (モロボシメグル) (編著)民俗学と考現学をこよなく愛する書店員VTuber。GAMABOOKS所属。民俗学解説配信、本の紹介、落語配信など幅広く活動している。特に民俗学関連では、民俗学系YouTuberとのコラボ、民俗学者(大学教授)へのインタビュー、VOICEVOX(ずんだもん)を使った対話型の民俗学解説動画の制作など、VTuberの領域にとらわれず「楽しく学ぶ」「学ぶことは楽しい」をコンセプトに情報発信している。
島村恭則 (シマムラタカノリ) (解説)民俗学者。関西学院大学社会学部長、教授。博士(文学)。専門は、現代民俗学・民俗学理論。1967年東京生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。主な著書に『開運!神秘のちから 縁起物』(NHK出版)、『現代民俗学入門』(創元社)、『みんなの民俗学』(平凡社)などがある。