本書『Out Of Style』には、デザイナーであり写真家でもある橋本すみれが、東京渋谷区外苑前に存在したアンティークショップOut Of Styleに魅了され収めた記録写真75点が収蔵されています。フィルムカメラが捉えたのは薄暗い照明の店内の様子と、そこに展示されていたオブジェの数々。それは今はもう観ることはできないショップの店主であり造形作家でもある、広瀬良二の作品たちです。「Out Of Style」とだけ表紙に刻まれた両手に収まるサイズのまるでプロダクトのような写真集には、入り口から天井まで色々な角度からの写真が、大・小様々なサイズでレイアウトされており、当時の店内の様子を立体的に体感できる構成となっています。本の装丁から写真の選定・デザインまで、すべて橋本すみれが広瀬良二と話を重ねながら完成させた一冊です。巻末には、Out Of Style店主であり造形作家の広瀬良二が、90年代から外苑前において、独自の世界観で多くの人を魅了した店への思いが込められた寄稿「仄かなOut Of Style」と、橋本すみれによるOut Of Styleとの出会いから、長い年月を経てこの写真集を出版するに至った経緯やこの本に込める思いを語った「甦る記憶が明日を照らすとき」が収められています。2人のアーティストが共有するOut Of Style の記憶と、それにまつわるそれぞれの葛藤を知ると、この写真集が何倍にも魅力的に、愛おしく感じることができます。Out Of Styleが閉店したのは12年前にも関わらず、この書籍はかつて店に通っていた常連客や、広瀬のア ートワークの支持者の間で、貴重な記録写真集としてすでに大きな話題を呼んでいます。
◆アンティークショップ「Out Of Style」1990年代前半から約20年間、東京渋谷の外苑前でノンジャンルの中古インテリア雑貨、書籍、家具、古着、アクセサリー等を、展示販売していたアンティークショップ。江戸時代の和物から’70年代の外国のものまで、店主の卓越した審美眼によって選ばれたモノたちと、店そのものが醸し出すアンダーグラウンドな 雰囲気が、多くの人を魅了した。2012年に惜しまれつつも閉店したが、店じまいまでの数年間は、店主が古い素材を使い作ったオブジェ・照明を中心に展示販売する店に特化していた。店名となっていたOut Of Styleは、現在は造形作家として活動する店主・広瀬良二の代名詞として使われる ことがある。