日常のなかにある偶然の瞬間
何気ない日常のなかにある偶然の交なりから生じる奇跡的な“瞬間”をとらえる写真家・オカダキサラ。彼女の写真からは様々な物語が立ち上がってくる。そんな“瞬間”をとらえた1枚のストリートスナップと、独特な視点から綴られるテキストを一対として構成される作品をオールカラーで全100点収録。
偶然性と構成美を共存させた唯一無二のスタイルが、メディアをはじめ多くの注目を集める気鋭の写真家による初の作品集。日英バイリンガル仕様。解説:打林俊技術も機材もどうってことない。華々しくもなければ、猟奇的でもない。だから「だれでも撮れる」と勘違いされたりもする。
でも、彼女の首にはいつも、どんなときでもカメラがぶら下がっている。
携帯をポケットから取り出し、ロックを解除して写真のアプリを起動させる、そのあいだに逃げ去っていく瞬間を、首から下げたカメラならシャッターを押すだけで捉えられる。その、わずか数秒間の決定的な差。
撮るべきときに、撮るべき場所にいるために、どれだけ走り続けてきたのだろう。その走行距離が「日常がねじれる一瞬を見つけるちから」につながることを、多くのひとは理解しない。
「撮れる」と「撮る」のあいだに横たわる深い溝。日々、目の前を通り過ぎる無数のシャッターチャンス。その「チャンス」を「シャッター」に結びつけるには、感覚をシャッターにのせた指先に直結させるトレーニングが必要だし、それができてこそ開けてくる視界というものを、僕らはいま、ここで目撃する。
――都築響一前書きなど
世界は美しい……ですが、優しくはありません。
解決しがたい問題は次から次へと生まれますし、終わりが見えない仕事は常に山積み。煩わしい人間関係はどこにでもありますし、悩みの種は尽きません。
同時に、世界には出会いの感動が溢れているのも事実です。まるで仕掛けられていたかのように偶然が重なる一瞬や、なぜ?と問いかけたくなる「ちょっと楽しい」
不思議な場面がどこかに必ずあります。
そんなシーンを写真に残してずらりと並べてみたらどうなるだろう? 日常には「ちょっと楽しい」がたくさんあるんだ、と思ってもらえるんじゃない?
それが私が街の写真を撮り続ける理由です。この作品集をご覧になった人が、ご自身の回りで「ちょっと楽しい」を探したくなってくれたら嬉しいです。
きっと毎日見慣れていた景色が、「新世界」になるはずです。
――オカダキサラ体裁
書名:新世界より
著者:オカダキサラ
編集:五十嵐健司
デザイン:孝学直
体裁:B5変型
頁数:200頁
定価:3,600円+税
刊行日:2023年12月19日
ISBN 978-4-910315-32-4【著者プロフィール】
オカダキサラ (著/文 | 写真)
1988年東京生まれ。2006年に武蔵野美術大学を卒業。在学時の課題をきっかけにストリートフォトを撮り始め、「1_WALL」「Juna21」「コニカミノルタフォトプレミオ」などに入選。2023年キャノン「GRAPHGATE」優秀賞受賞。
ウェブサイト「fashionsnap.com」「NeWORLD」、都築響一氏発行のメールマガジン「ROADSIDERS’ weekly」で写真コラムを連載。