【紹介】この本は新しいタトゥーの時代を開こうとしている。自然力を封じ込めた美しい呪的紋様を直に皮膚に彫り込み、深く身に纏う。トライバルタトゥーは人間と自然の間に力強い美の通路を開く。21世紀の都市的文明を生きる人類が見出した新しいコスチューム! ――中沢新一(人類学者)
バックパッカーの旅費稼ぎから始まった彫師としてのキャリアは、やがて世界の民族刺青を求めるフィールドワークに発展し、さらに時空を超えて縄文へと繋がる。日本を代表するタトゥーアーティスト・大島托が、トライバルタトゥーをめぐるリアルな習俗と歴史、そして現在を描き出す旅の記録。
【目次】
プロローグ
第一章 インド第二章 タイ第三章 ボルネオ第四章 ケルティック第五章 ハイダ
幕間
第六章 ポリネシア第七章 ベルベル第八章 台湾第九章 琉球第十章 アイヌ第十一章 縄文
エピローグ
【まえがきなど】
トライバルタトゥー現在、僕は黒一色のブラックワークという大きな括りの中の、「トライバルタトゥー」というジャンルを専門としている。トライバルタトゥーとは文字通り「部族のタトゥー」のことで、主に狩猟採集によって生活し、いまだ文字文化を持たないような少数部族において、成年の通過儀礼、あるいは身体装飾の一環として、伝統的に施されてきた文身の総称だ。あえてトライバルと称しているのは、近代以降に発生した現代タトゥーと区別するためだ。たとえば日本においては、江戸時代に浮世絵をベースに発祥した和彫りが現代タトゥー、アイヌ民族や琉球民族が二〇世紀前半までおこなってきたシヌイェやハジチなどの文身がトライバルタトゥーとなる。もちろん、日本列島外の世界各地にも広くトライバルタトゥーの伝統はあったし、今もなおある。一九九〇年代にはボルネオ島の文様をベースとするクレイジートライバルが世界的に大流行したため、トライバルタトゥーと聞くとまずクレイジートライバルの文様ばかりを思い浮かべる人が多いかもしれない。太い黒線が何本か集合し、流れたり、絡み合ったりしている、読めない習字のような、あるいはトラやシマウマの模様のようなデザインといえば分かるだろうか。が、それはあくまでも一地域のトライバルタトゥー文様の現代的なアレンジのパターンに過ぎない。実際のところ世界にはもっと多様で多彩なトライバルタトゥー文様が存在しているのだ。(プロローグより抜粋)
著者プロフィール大島 托 (オオシマ タク) (著)1970年、福岡県出身。タトゥースタジオ「APOCARIPT」主宰。黒一色の文様を刻むトライバル・タトゥーおよびブラックワークを専門とする。世界各地に残る民族タトゥーを現地に赴いてリサーチし、現代的なタトゥーデザインに取り入れている。2016年よりジャーナリストのケロッピー前田と共に縄文時代の文身を現代に創造的に復興するプロジェクト「縄文族(JOMON TRIBE)」を始動。
KENTA UMEDA (ウメダ ケンタ) (写真)1985年、東京都出身。写真家。現代の祈り、異教、踊りと祭り。タトゥーを入れたことでタトゥーの入った身体に興味を持ち縄文族の撮影をおこなう。