紹介居留民二二五名死亡。見逃された予兆、責任逃れ、プロパガンダ日中戦争開始から約三週間後の一九三七年七月二九日。北京からほど近い通州で、日本の傀儡政権である冀東政権麾下の中国人部隊「保安隊」が突如反乱を起こした。「通州事件」と呼ばれるこの反乱により、二二五名もの日本人居留民(うち一一一名が朝鮮人)が命を落とした。しかし、通州事件には、未だ多くの疑問が残されている。「反乱はなぜ起きたのか?」「予兆はなかったのか?」「責任は誰が取ったのか?」「事件はどう報道されたのか?」――本書では、これらの疑問に対し、数々の史料を駆使して検討を加える。事件発生から八〇年が経とうとしている今だからこそ、我々は感情的で不毛な議論を排し、実証的見地からその全貌を捉え直さなければならない。
目次はじめに地 図第一章 通州事件前史第二章 通州事件の経過コラム その一 今に遺る通州事件の痕跡 ―「奥田重信君之碑」―第三章 通州事件に残る疑問コラム その二 通州事件の歴史写真をめぐっておわりにあとがき参考文献一覧
著者プロフィール広中 一成 (ヒロナカ イッセイ) (著/文)中国近現代史研究者一九七八年、愛知県生まれ。二〇一二年、愛知大学大学院中国研究科博士後期課程修了。博士(中国研究)。現在は愛知大学国際コミュニケーション学部非常勤講師。専門は中国近現代史、日中戦争史、中国傀儡政権史。大学院時代より一〇年近く、通州事件に関する史料収集、現地調査、論考の発表を行ってきた。本書はその成果を一般向けにまとめたものである。ほかの著作に、『ニセチャイナ 満洲・蒙疆・冀東・臨時・維新・南京』(社会評論社、二〇一三年)、『日中和平工作の記録―今井武夫と汪兆銘・蒋介石』(彩流社、二〇一三年)、『語り継ぐ戦争―中国・シベリア・南方・本土「東三河8人の証言」』(えにし書房、二〇一四年)などがある。ツイッターは@hironakaissei