第11回中日短歌大賞受賞!!
短歌をこころから楽しんだ季節の記録かつてニューウェーブと呼ばれ、暴走と迷走を繰り返した日々を経て、しばらくは短歌に苦しめられてもいましたけれど、四十歳を過ぎた頃、ふたたび蜜月とでも言いましょうか、書くことが楽しくてしかたない季節がやって来ました。(あとがきより)「ニューウェーブ短歌」を牽引した一人、荻原裕幸による、19年ぶりの第6歌集。
さまざまな境界線が滲み合い、交差する中であふれ出すのは不可逆的かつ永遠的な「いま」の抒情だ。矛盾と異化を含んだ梅の花の心地良い香りに誘われて、荻原裕幸は今日も現代短歌の〈夢〉をリリカルに完食する。濱松哲朗
荻原さんの今までの歌集のなかでいちばんいいと思います。平岡直子
【五首選】わたくしの犬の部分がざわめいて春のそこかしこを噛みまくる優先順位がたがひに二番であるやうな間柄にて梅を見にゆく空が晴れても妻が晴れないひるさがり紫陽花も私もずぶ濡れでたまに夢でつながる人の部屋に来てけふはしづかに秋茄子を煮る蕪と無が似てゐることのかなしみももろとも煮えてゆく冬の音
【著者プロフィール】荻原裕幸(おぎはら・ひろゆき)1962年生まれ。名古屋市在住。愛知県立大学卒。90年代のはじめ、朝日新聞に掲載された歌論の反響をきっかけに、ニューウェーブと呼ばれる。第30回短歌研究新人賞受賞。名古屋市芸術奨励賞受賞。歌集出版企画「歌葉」プロデュース、総合誌「短歌ヴァーサス」責任編集、等、フリーな立場を活かした活動を続けている。歌集に『青年霊歌』『甘藍派宣言』『あるまじろん』『世紀末くん!』、未刊歌集『永遠青天症』含む全歌集『デジタル・ビスケット』(沖積舎)がある。「東桜歌会」主宰。同人誌「短歌ホリック」発行人。
現代歌人シリーズ現代短歌とは何か。前衛短歌を継走するニューウェーブからポスト・ニューウェーブ、さらに、まだ名づけられていない世代まで、現代短歌は確かに生き続けている。彼らはいま、何を考え、どこに向かおうとしているのか……。このシリーズは、縁あって出会った現代歌人による「詩歌の未来」のための饗宴である。