幻の心臓が鳴りやまない燃えやすくて凍りやすい感情に居場所を与える。今ここに生きるために。未来を確かめるために。────東 直子
【著者プロフィール】櫻井朋子(さくらい・ともこ)1992年生まれ。2017年、新聞歌壇に投稿を始める。同年、東京歌壇(東京新聞・東直子選歌欄)年間賞。
【5首】母さんの自作だったと後に知るお伽話で燃えていた町くるぶしは小さな果実 夕闇に熟れゆくきみを起こせずにいるあの女も使ったかなぁ出汁巻のうずに差し込む基礎体温計一歩ずつ脱ぎ捨てていくサンダルのごときクリップ海に焦がれて枯れるのも咲くのも花の意志ならばわたしの体はだれの福音
新鋭短歌シリーズ今、若い歌人たちは、どこにいるのだろう。どんな歌が詠まれているのだろう。今、実に多くの若者が現代短歌に集まっている。同人誌、学生短歌、さらにはTwitterまで短歌の場は、爆発的に広がっている。文学フリマのブースには、若者が溢れている。そればかりではない。伝統的な短歌結社も動き始めている。現代短歌は実におもしろい。表現の現在がここにある。「新鋭短歌シリーズ」は、今を詠う歌人のエッセンスを届ける。