岐阜のいちばんの魅力は、かつて栄えた地場産業がダイナミックに寂れた「過去のまち」が随所に残っていることだ。まるで旧インフラで成り立つ都市標本のようで、まさに「レトロピア」の名にふさわしい。ユートピアはどこにもない理想の国だが、レトロピアはなくなったはずの古いもので造られた都市の集まり。そんなふうに岐阜を位置づけてみたら、「地味でマイナー」という一般的な岐阜のイメージをくつがえす刺激的な風景が見えてきた。
全蓋式アーケードで繋がった巨大な柳ケ瀬商店街は、アーケードスナックの宝庫だし、遊郭からソープ街まで女性街の変遷をたどれる金津園や、岐阜駅前の闇市ハルピン街をもとにした繊維問屋街など、岐阜駅から徒歩圏だけでもこんなにある。陶器や鉱山などの地場産業で栄え、独特のひなびた情緒と哀愁ただよう多治見市や神岡町。団地や鉄道など、20世紀のインフラが残した町の風景も素晴らしい。
そして水先案内人には、岐阜で活動する「TEAM酷道」の隊長よごれんさんをお迎えした。これまでチーコクといえば、酷道、廃墟、エロ本小屋などのハードコアなイメージがあったと思う。しかし一緒に旧市街地で話を聞き、過去の街並みに目を凝らすうち、気づけばレトロピアの魅力にずぶずぶとのめり込んでくれていた。無茶ぶりに応えて、岐阜の新しい魅力を本気で探してくれた案内人の全面協力により、かつてない岐阜ガイドブックになったと思う。
本特集のメインには、歓楽街、女性街、繊維街、陶器街、鉱山街、団地街、廃線街の7つの旧市街地をピックアップした。本誌制作中にも閉店や解体が相次いだので、レトロピアも幻となる日が近いかもしれない。そうなるまえに、一緒に見ていこう。(特集まえがきより)
◆特集◆ レトロピア岐阜
■巻頭インタビュー 岐阜の案内人「TEAM酷道」何もない場所を、楽しむ。
■歓楽街 柳ケ瀬ブルースをもういちど
■女性街 移動する「女の園」を歩く
■繊維街 忘れられたハルピン街
■陶器街 陶都36景
■鉱山街 鉱山都市の明暗を歩く 神岡
■団地街 団地鑑賞Q&Aツアー
■廃線街 名鉄600V線区の駅前文化を辿って
■はみだしコラム
遊郭跡巡礼/岐阜レトロミュージアムのここがすごい!(栄華)/2018年宇宙喫茶の旅(金原みわ)/昭和遺産ラブホのお手並み拝見❤(逢根あまみ)/笠松競馬場で旅打ち草競馬/エグロ会館でビリヤードに挑戦!/「化石洋食」を食べてみる!/恵那市岩村町に残る「元祖カステーラ」の謎/絶滅寸前⁉ 岐阜の給水塔事情(日本給水党UC)/マンホールの蓋からみた岐阜(森本庄治)/プレイバック名鉄600V(TEAM酷道よごれん)/東海道本線プレ国鉄遺産(TEAM酷道よごれん)■岐阜観光の栞
香山哲のGIFU地図/高木壮太 旅の予定表/名所遺産ところどころ/社会科見学ノススメ/特選お食事案内/お祭り便利暦/ローカル三行はみだし情報■ミステリーパトロール
スーパーサカイ/福来博士記念館/金生山/天空遊歩道/猫面魚の池/谷汲山華厳寺満願堂/乙姫公園/「龍の瞳」と飛騨野菜■やりすぎ家庭訪問
タイヤアートのT邸/手づくりオブジェのM医院/黒野城の新観光迷所S邸/イチローハウス定点観測◆連載◆ REGULAR
風俗ビルに住んでいた男のその後と山谷住まい(マングローブ村越)◆参加メンバー◆
TEAM酷道よごれん/TEAM酷道 とらジェベル/TEAM酷道 船津/チーム4.5畳 けんちん/日本給水塔 UC/栄華/金原みわ/逢根あまみ/森本庄治/高木壮太/香山哲/マングローブ村越
出版社:八画文化会館
出版年:2018/6
B5変形並版:96ページ
定価:1800円(税別)
こちらは新本での販売となります。