19世紀の間だけ作られていた通称「トゥルー・トリオ」(真のトリオ)という非常に珍しいお品。ティーカップ、コーヒーカップ、ソーサーの3点がセットになっており、受け皿(ソーサー)一枚に対し、飲むもの(お茶かコーヒー)に応じてカップを使い分けるという、一風変わったテーブルウェアです。
今日では通常トリオといえばティーカップ、ソーサー、ケーキプレートの三点で構成されるセットを指しますが、このお品が作られた当時、まだそういった定義は浸透していませんでした。お茶かコーヒー(今日でいうエスプレッソ)という2つの高価な嗜好品を嗜む裕福な人士に向けてデザインされ、セットで売られていたものがこちらのようなトゥルー・トリオのセットでした。
ヴィクトリア朝時代、産業革命に伴ってイギリス国内の経済規模が拡大し、それまでと比べて庶民の生活及び教育の水準は大幅に向上しました。そうして生まれた豊かさは新たな購買層と需要を生み、今日には存在しない様々な(時に極めて珍妙な)製品が世に送り出されました。このようなロマン溢れるお品こそ、すでに失われた当時の人々の生活スタイルの一端を反映した、正当なアンティーク品と言えるのではないでしょうか。
均質できめの細かい上質な素地にアンティーク・ピンクの釉薬で上絵付けがされ、仕上げに純金彩で衣装化された植物紋様が描かれています。この金彩絵付け、非常に緊密で規則的なパターンですが、当時の未熟な印刷技術によるものではなく、職人による手仕事で仕上げられたもの。
実用されていたもののようで金彩に剥げが見られますが、素地自体は驚くほど綺麗な状態です。大事に使用されて来たことが窺えます。
同時期に同じ窯で作られた同シリーズのB&Bプレート(n966)も在庫があります。