2021.12.14
一人で佐渡に移住を決めて野草茶を手掛けるまで
今回お話を伺う人
さどのめぐみっ茶
片岡悦子さん
趣味:猫と遊ぶこと。ビデオ鑑賞。
たまたま訪れた佐渡の地で自然の魅力に心を打たれ、一人で移住を決めた片岡さん。 そこで佐渡の野草を知り、佐渡の魅力を多くの人に知ってもらいたいと、オリジナルのお茶の販売を始めていく。パワフルに走り続けてきたこれまでと、こちらまで楽しみになってしまう今後について、お話を伺いました。
“佐渡が私の生きる世界”
- 佐渡で野草茶の製造、販売をしているか片岡さんにお話を伺っていきたいと思います。 佐渡へ移住されたきっかけは何ですか?
- 片岡さん 佐渡の知り合いを訪ねに、冬から春にかけて伺ったことがきっかけでした。佐渡では日本海特有の重苦しい冬が、色鮮やかな春に変わる瞬間があるんです。そこら中の草原や山が花でいっぱいになる変化を初めて目の当たりにした瞬間、「ここが私の生きる世界だな」と感じ、長崎から佐渡に移住しました。2012年2月のことですね。
-
そうなのですか!?
なんだか簡単におっしゃっていますが、移住するにあたり不安だったことはありますか? - 片岡さん 元々、好奇心旺盛なので、これといった不安はありませんでした。一から友人を作っていく過程が楽しかったです。
- すごい行動力です!活動をはじめた理由を教えてください。
- 片岡さん 佐渡に移住し、SNS上で佐渡の野草に詳しい方を偶然見つけ、“野草”というキーワードがふと気になったので声をかけたことが始まりでした。その方から佐渡の野草について教えていただき、学んでいくうちに、実際に野草を使った地域おこしをとお茶作りを思いつき、2015年9月に創業しましたね。 とはいっても、今まで経理事務の仕事しかしたことがなく、起業経験もなかったので、行政サポートを活用して起業しましたよ。
1人で始めた野草茶づくりも、息子も加わり、今では5人
当初の野草採取は一人で山に向かうため、迷ったら帰れない、何かあっても気付いてもらえないことから、万全の準備と心構えで野草を採りに行っていたそう。
- 偶然の重なりから始まった野草茶なのですね。どのように進めていったのですか?
- 片岡さん 最初は採取からパッケージングまで、すべて一人でやっていました。一人で作り続けるのは大変でしたが、2017年頃に息子が移住してきて手伝ってくれるようになり、だいぶ楽になりましたよ。 それからは2019年から洗浄機や裁断機、乾燥機、焙煎機等の機械を購入し、商品のグレードが上がり一定供給ができるようなりました。従業員さんも3人雇用し、現在は5人でやっています。
片岡さんを中心に、従業員さんたちと記念撮影。
- 息子さんが手伝ってくれるようになり、従業員さんも増えて、とてもうれしいですね。 息子さんや他のスタッフの方々と運営されているとのことでしたが、どのように分担をされていますか?
- 片岡さん 息子はブレンドと焙煎を担当し、提案しています。ほかにも簡単なパッケージのデザイン等もお願いしていますね。従業員さんは採取からパッケージングまですべての工程を分担して行っており、私は主に営業と経理等の事務作業をやっています。 もちろん繁忙期である春夏の野草採取の期間は全員で行っていますよ。
開花時期は5月~6月まで、従業員総出でトビシマカンゾウの花や葉を摘みます!
- 親子で活動すると、ケンカしたりなどありませんか?
- 片岡さん 一切しないですね。私もまだ経験が浅いですし、そこに息子が加わってくれるので、互いにないものを補って相談しあい、物事を進めています。
展示会は親子で出店。
- 良き同僚という関係性を感じます。 佐渡の自然の中で身を置くことにより、一年を通して楽しみな時期、瞬間はありますか?
- 片岡さん やっぱり春の4月~5月が一番いいですね。雪が解けて段々植物が元気に芽生えてくる様子は、何年経っても感動します。緑の青々とした葉っぱを見ると自然の素晴らしさと、命を感じます。
佐渡の野草は多くて複雑
- 聞いたお話や、お写真を観ても、佐渡は最高の自然環境ですね。 野草茶についてお伺いしたいのですが、野草のブレンドティーは通常のお茶とどのような違いがありますか?
- 片岡さん 緑茶は基本単種もしくは、茶葉の品種でブレンドしますが、野草は様々な種類の植物、そして部位を使っているので多種多様です。野草同士、味の相性もありますし、薬機法で使ってはいけない野草や部位などもあるので、そこを熟知したうえでブレンドをしなくていけません。
- 感覚や知識においても繊細な作業ですが、野草のブレンドティーを作る上でこだわっていることを教えてください。
- 片岡さん 一にも二にも“味”で、飲みやすさ、おいしさにこだわってブレンドしています。 野草茶は苦くてまずいという概念を払拭するために、2gの茶葉を作るのに様々な野草を0.1g単位で微調整していきます。また野草の種類が多いので、ブレンドも難しく、納得のいく味が作れなかったりすることもありますよ。
様々な野草を使用し、ブレンドしています。
- 小さな単位での調整が味を決めるのですね。いろいろなブレンドを作ってきた中で、特におすすめの商品を教えてください。
- 片岡さん どれもおすすめですが、「くろもじブレンド」は個人的にも大好きです。味は爽やかで少しスパイシー。クロモジの枝を煮出したお茶は綺麗なピンク色になります。 最近では抗菌作用、抗ウイルス作用、消臭作用、防虫作用など様々な効果があることがわかってきました。 ちなみに冬にクロモジの枝を採りに行きますよ。1月、2月の寒い時期のクロモジは鉄分やビタミンC、マグネシウムなど栄養が豊富なんです!
佐渡の野草茶を全国の人に知ってもらいたい
- 苦労したこと、嬉しかったことを教えてください。
- 片岡さん 最初、野草茶はなかなか一般的に馴染みがなく、営業に行っても「お茶」という分野はマイナーでバイヤーさんの反応もあまりよくありませんでした。 ただここ1年くらいはSNSの発信や、イベント出店でのお客様とのやりとり、商談会への出店など地道にやってきたおかげもあり、全国の様々なところからお取引のお話を頂けるようになり、お取り扱い先もずいぶん増えました。 「野草のお茶っておいしい」と言ってもらえると、手ごたえを感じますし、パッケージに関してもお褒めの言葉をいただくと、やっぱり嬉しいですね。
- お話を聞いていると、とてもパワフルな片岡さまですが、そのエネルギーはどこから来るのですか?
- 片岡さん 特に意識したことないですが、自然がエネルギー源ですね。いつも何かするときに必ず宣言をしてしまうので、できなかったり、失敗したりすると落ち込んだりします。でも、そんな時は佐渡の空気や自然に触れて無心になり、それから、どうリカバリーしようかなと考えたり。
今後について
- 今後の展望があれば教えてください。
- 片岡さん 直近では、数量限定にはなりますが佐渡産のフルーツと野草のドライフルーツティを販売する予定です。ほかにも、トビシマカンゾウ(佐渡島と山形の飛島だけに咲くユリ科の植物)の花を使ったハイブランドの商品やなども考えていますよ。2~3年くらい先には、カフェも開きたいですね。 実際、コロナの影響でいろいろと事業展開の見直しを余儀なくされていますが、昨年後半からは逆にお取引先も増え、野草茶という分野が少しずつ注目されてうれしく思います。 これからも、焦らず驕らず地道にやっていきます。
柿畑で従業員さんとひといき。草木が鮮やかで、写真加工の必要がありません(笑)
取材を終えて
地図上でしかみたことがなかった佐渡。 佐渡は国内で二番目に大きな島で、夏は涼しく、冬は暖かい。動植物も魚介類も豊富で、山と海と両方を感じられる多種多様な島だと片岡さんは教えてくれました。 すぐには行けないけれど、いつか絶対行ってみたい、それまでは「さどのめぐみっ茶」で味や香りだけでも、佐渡を感じる小旅行をしてみようかな。
「さどのめぐみっ茶」サイトでは、ショップ以外にも生き生きとした草木の写真がとっても美しく、サイト内をめぐるだけでも癒されます♪ぜひ訪れてみてくださいね!
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