伝統的なデザインの傾向として、わりと四角形の格子の枠の中に何かのカットを入れるようなものが多いです。このデザインを作る前に伝統的なデザインのワイングラスをいくつか製作しておりましたので、デザインの方向性としては全体が流れるような線で構成されたものにし、他の作品とはまた違った味わいを感じられるものを作ろうと思いました。また直感的、アート的、女性的なデザインで切子らしさがあって、オリジナリティを感じて頂けるようなデザインを目指しました。まとめると、・他の作品とテイストが違う曲線を多用する・直感的、アート的、女性的なデザインである・切子らしさがある・オリジナリティがあるという4つの要件を満たすものというところで考え始めています。まず考えたのが大きな蕾の部分です。曲線の頂点を中心から下にずらすことで、先端がシャープで下がざっくりしたカットになるように調整しています。蕾の外枠のカットは線の太さの緩急が大事だと考えましたので、終点部分のカットの太さと深さはかなりのものになっており、手触りの良さにもつながっているかと思います。紙に気ままにペンを走らせながら直感的にデザインを考えておりましたが、蕾の中のデザインはかなりオリジナリティがあるかと思います。蕾の中の植物の芯がしっかり存在しているイメージとなりました。丸の部分は透けていて、上に伸びる芯の部分は消し加工により擦りガラス状に仕上げています。消し加工をワンポイント入れることで、上品さがグラスに出てくるので採用しております。蕾と蕾の間には細い曲線のみで構成された伝統的な文様の矢来のようなデザインとなっています。切子らしさとはなんだろうと考えた時に原点回帰というかこの矢来のような線が折り重なっている状態のことではないかと考えました。この曲線の配置も直感的に紙に書いたものを調整してデザインしております。細い曲線の頂点部分にワンポイントとして伝統的な文様の菊繋ぎをカットしております。個人的には菊繋ぎはこのようにワンポイントで使うのが美しく見えるデザインとしての使い方だと思っております。菊繋ぎは伝統的な文様のカットの中でも一番難しいレベルのものでグレードの高さを示すものでもあります。長寿、無病息災、高貴、高潔などの良い意味が含まれた縁起の良い文様です。全てのカットは曲線により構成されており、側面から見ると丸みを帯びたやわらかい印象を受けますが、その対比で上から覗くと四角形が出てくる細工を仕込みました。グラスの形状とカットの見え方を熟知していないとこういった細工は作れません。直感的、アート的、女性的なデザインでグレードの高いデザインを目指したものです。他の製品とかなり違うオリジナリティのあるなかなかの傑作のデザインです。自分用、贈り物、お店のブランドイメージアップ等にご検討頂けると幸いです。