馬をテーマにデザインを作りたいと長らく構想しておりましたが、発想が馬そのものを表現する方向の凡デザインを考えがちだったので、頓挫していました。誰が見ても同じデザインにしか見えないものは良いデザインではないと断定しているので、馬そのものを削る表現はNGだと考えております。馬そのものではなく、馬具に着目する機転の利かせ方で表現する方向で考えだしました。足の裏につける蹄鉄以外は馬具について知らなかったので、色々洗い出して調べた結果、馬銜(はみ)という馬具が切子で表現出来そうだというところで採用するに至りました。馬の足の裏と、口元に近い部分に馬銜を置くデザインとなりました。馬銜の部分は3か所ありますが、キャンパスの広さの関係で口元を擦っておりません。しかし、それがアクセントを加えていてデザイン性としても優秀です。最初にお水を飲んで欲しいのですが、口元を擦ることで口当たりをよくしているので、ただのお水がおいしく感じて頂けると思います。馬銜、馬の足の裏の先端部分、蹄鉄の穴にあたる部分は消し加工により、擦りガラス状に仕上げております。磨かない表現をワンポイント入れることでグラスの格式の高さを感じられるようになるので採用しております。馬の足の裏は菊籠目(きくかごめ)という伝統的な文様をV字に近い形で入れております。消し加工の部分と菊籠目は馬の足が地面に接地してすり減って白くなっている部分を表現しております。菊籠目は伝統的な文様の中でもカット難易度が最も高いレベルのものです。菊には無病息災、長寿、高貴など縁起の良い意味が込められております。面白いデザインをしているので馬具がテーマだと言わなければ、人によって見え方はかなり変わると思います。私が考える良いデザインの要件を満たせているのではないでしょうか。テーマ性があり、デザインも良く、オリジナリティがあり、かなりの傑作が出来上がったと製作者自身非常に満足しております自分用、贈り物、お店のブランドイメージアップ等にご検討頂けると幸いです。