このデザインのテーマはボウル部分をざっくり削って丸い形状を変化させて手触りを楽しめるようにするところです。前回作成した菊繋ぎと亀甲ワイングラスもボウル部分の形状を丸から変化させて手触りと口当たりの違いによっても切子を楽しめるというものでしたが、それを踏襲しています。前回は亀甲によりゴツゴツに形状を変化させましたが、今回は球を平に削って大きな面を作るイメージで削りました。また大きな楕円をベースに周辺にも心地よい手触りを感じられるカットを大きめに施しました。大きな楕円は平らに削っておりますが、その下の小さな楕円は平ではなく、内側をえぐるようにくぼませながら削っており、手触りが違います。深めにくぼませているので持った時に指の引っ掛かりを感じてフィット感があり、持ち心地がとても良いと感じられると思います。かなり浅い角度で削ったひし山も深めに削っており、指の腹で撫でたくなるような心地よい触り心地があります。この浅い角度で削ったカットがかなりアクセントになっていて、単純に全体を円形の丸で削ったデザインでは出すことのできない楕円の魅せ方が出来ております。同じサイズの円を羅列したデザインも世の中に多くございますが、それらには出せない幻想的な見え方をしているかと思います。大きい楕円と小さい楕円と浅い角度のカットの3つによって回転させた時にもはや説明不可能なほどの幻想的な見え方がします。よって名前は幻想ワイングラスとなりました。下部に多めのカットを施しているのはボウル部分の透け感を意識しています。飲料の色を十分に楽しめるように配慮しております。下部がオリジナルに寄っているので、上部は伝統的な紋様にし、伝統とオリジナルのバランスを取りました。カットされている伝統的な紋様は菊繋ぎ(きくつなぎ)と菊籠目(きくかごめ)です。中心に色が残っている方が菊籠目です。両方とも伝統的な紋様の中でもトップクラスに難しいカット難易度を誇ります。普通の職人なら大枠ごとに文様を1個ずつしか入れるデザインしかしません。しかし写真の通り、菊繋ぎと菊籠目を大枠で分断せずに、同じカットの直線を利用しているので、一体感を感じられるように考慮しています。菊は無病息災、長寿など健康や長生きの意味が込められた縁起の良い紋様です。口元は全体を薄くなるように擦っており、口当たりの良さを追求しております。口当たり、手触りを考慮しつつ、ボウル部分の透け感を意識しながらもオリジナリティのあるデザインをし、伝統的な部分もしっかり魅せています。ここまで考えて製作しているデザインはほとんど無いかと思います。自分用、贈り物、お店のブランドイメージアップ等にご検討頂けると幸いです。