江戸切子の底のデザインで最も伝統的でベーシックなデザインは菊のデザインで、そういう製品も多くあります。
当工房でも16枚の花びらになるような菊を底に使ったものもございます。
底菊がかなり一般的なので、ちょっと変わった底の形状を作りたいなと思って、色々考察しました。
その中で1つ表現してみたいなと思ったのが、ダイヤモンドのカットの形です。
ダイヤモンドのブリリアントカットを上から見た時の構造を切子で綺麗に見えるように少し調整して、底に配置してみました。
またその「ダイヤ底」の線が底から側面に伸びてそのまま六角籠目の文様に連結して一体感を出すようなデザインをしてみました。
六角籠目はカット本数が少なく、グラスが暗くなりがちなので、六角の中に十草を配置し、採光も考慮して全体のバランスを整えてみました。
また酸磨きで全体を磨いているものには表現できない一部だけすりガラス状というものを表現するため、十草部分はあえて磨きを行わずすりガラス状にしております。
「ダイヤ底」という新しいデザインを考案しながら、伝統的である六角籠目をベースに全体に統一感を出した製品です。
六角籠目は魔よけの意味があり縁起的にも良いものです。
ダイヤ底の形状や、底から側面につながって一体化しているこのデザインは作り手からしたら構造が難しいので混乱してカットミスを起こしやすいデザインになっております。
ガラスの表面に書く設計図も手の込んだものとなり大変です。
しかし、出来上がった時の綺麗さはユーザーにもご納得頂けると思いますので、あえてこの難しいデザインで決定させて頂きたいと思っております。