日本の美としてシンプルというものがあります。不要な部分を排除して機能を追求するととてもシンプルになるという「機能美(きのうび)と言われている美しさです。機能美についての動画を見る機会があり、日本の各工芸品で機能美を備えているものを見て触発されて何か機能美を備えたシンプルなものを作れないかと思ってデザインしました。口元に近い横の輪は、飲料を飲んだ際に、水分が下に伝うことを防ぐ効果のあるカットです。縦の線は何かカクテルを作る際でも透かしてどれくらい中に入ってるかを確認できるメモリのような役割を想定して削っています。側面の下部を透かすことで、底に削った底菊が虚像で浮かび上がって二重に見える細工をしております。飲料の色も楽しめるように当工房の基準よりも10mmほど高めに側面の下部を透かしましたが、主張し過ぎないくらいの調整としました。底菊という意図的なデザイン以外は全て機能によるデザインで、機能美を満たした日本の美しさを感じて頂けるデザインになったかと思います。私自身は、元々シンプルなデザインは好みではなく、デザインを盛り込む形の方が好きでした。ただ、今回製作したこのデザインを見ると、大人の洗練されたかっこよさを感じて非常に満足しています。切子の素材の透き通る綺麗な色も十分楽しめるかと思います。自分用、贈り物、お店のブランドイメージアップなどにご検討頂ければ幸いです。