デザインのテーマを決めて製作しましたが、見る人によって多種多様に確実に印象が変わると思いました。私が定義付けして見方が狭まるよりも、みなさんが見て感じたように定義してもらえればと思います。見る人によって変異するデザイン、すなわちメタモルフォーシスと名付けました。底の角はざっくり斜めに平らに削っており、六角形を構成しております。それの目指すところは、手触りの良さです。私は切子を説明するときに「ガラスの表面をカットして模様付けをすること」といつも人に説明しておりました。しかし、とある切子作家のご年配の方と技術的な対談を5時間程する機会があり、そこで、ガラス自体の形状を変えて楽しむといった概念を教えて頂きました。底の角を落として六角形にしたエッジの部分は型押しのガラスでは絶対に表現できない触り心地良さがあり、切子を使っている心地良さを手の感触から感じることができます。また口元部分にも細工があります。口元を半円状に口元側に傾斜をつけて擦ることで口当たりがとてもよくなります。四角に擦る、色の部分を残さないで擦る、1mmの色を残しながら擦る、弧をつけて擦るなど、10パターンくらい口元を擦って口当たりを確認しましたが、最終的にこの半円状に擦った時が最も良いと思ったのでこれに決定しました。側面に伝統的な菊繋ぎ、菊籠目、麻の葉の細かいカットをしております。当工房で通常行うカットの半分くらいのサイズにしております。その繊細さをグラスから感じて頂けていると思います。菊繋ぎ、菊籠目は伝統的な文様の中でも1位、2位になるくらいのカット難易度があります。菊は長寿、無病息災、高貴、高潔など縁起の良い意味を持った文様です。自分用、贈り物、お店のブランドイメージアップにご検討頂けると幸いです。