デザインのテーマを決めて製作しましたが、見る人によって多種多様に確実に印象が変わると思いました。
私が定義付けして見方が狭まるよりも、みなさんが見て感じたように定義してもらえればと思います。
見る人によって変異するデザイン、すなわちメタモルフォーシスと名付けました。
メタモルフォーシスとは幼虫であるサナギから成虫である蝶になる際に、体の作りが全く違う生物のように変化するという意味です。
実際に行きつけのオーセンティックなBARでは、
「花火のようだ」
「雪国の蓑(みの)みたいで日本を感じる」
「万華鏡みたい」
のようなお声を頂きました。
このように見る人によってデザインが変化して見えるのがこのグラスのネーミングの狙い目だったので、成功と言えます。
底の角はざっくり斜めに平らに削っており、六角形を構成しております。
それの目指すところは、手触りの良さです。
私は切子を説明するときに「ガラスの表面をカットして模様付けをすること」といつも人に説明しておりました。
しかし、とある機会にガラス自体の形状を変えて楽しむといった概念を知りました。
底の角を落として六角形にしたエッジの部分は型押しのガラスでは絶対に表現できない触り心地良さがあり、切子を使っている心地良さを手の感触から感じることができます。
また側面にも深めのカットしており、その手触りも切子ならではのものです。
手触りを出すための機能がデザインにつながる機能美となるものです。
また口元部分にも細工があります。
補助線を少し書きましたが、口元が円ではなく、少し弧を内側に描いています。
口元側に傾斜をつけて擦ることで口当たりがとてもよくなります。
この口当たりの良さは流行りの薄張り(うすはり)のグラスの口当たりとはまた別の種類の口当たりの良さがあります。
最初に使用される時にお水を飲んでほしいのですが、口当たりの良さによってお水がすごく美味しく感じるかと思います。
側面に伝統的な文様の菊繋ぎ、菊籠目、八角籠目のカットをしております。
菊繋ぎ。
菊は長寿、無病息災、高貴、高潔など縁起の良い意味を持った文様です。
菊籠目。
菊繋ぎと菊籠目は当工房で通常行うカットの半分のサイズにしております。
その繊細さをグラスから感じて頂けていると思います。
八角籠目。
八角籠目は籠の編み目で悪い物を取り除くという魔除け、厄除けの意味があるこれもまた縁起の良い文様です。
菊繋ぎ、菊籠目、八角籠目は伝統的な文様のカットの中でもトップ3くらいに難しいカットで、グレードの高い作品になるようにあえて選択しています。
圧倒的なオリジナルデザインと伝統的な文様を帯状等にしてくっきり分断することなく、きれいに融合させた傑作です。
カットグラスの1つの完成形であり、今後100年あるいは200年経ってもその美しさは衰えることを知らないでしょう。
自分用、贈り物、祝い事、インスタ映え等にご検討ください。