本製品、ぐいのみ・霧桜(きりざくら)は伝統的な矢来をベースにした製品でございます。
元々は当工房オリジナルでスタンダードの四つ矢来を配置した「ぐいのみ・四つ矢来(よつやらい)」として正統派で美しい切子として試作を開始しました。
16等分を4分割にしてカットする計算が、カットが複雑すぎてミスして3分割にしてしまったところ、5枚の花びらが出てくることがわかりました。
その花びらを見た時に桜だと直感的に思いました。
これを製作している時期は2月の中旬です。
もうすぐで春が待っているので桜をテーマにしたいと思い、四つ矢来のデザインは一旦置いておくことにしました。
また四つ矢来をベースにしておりましたが、ぐいのみのサイズだと線は少なくした方が色被せ部分とカット部分の調和が取れてきれいに見えるので、線を少なくした二重矢来を採用しております。
試作品をベースに今度は3分割に合うように最初から15等分で調整し、5枚の花びらがきれいに整合性を保ちながら現れるようにしました。
しかし、中心部分の5枚の花びらをもつ桜は目を少し離して他のカットの部分を見ていたりすると、ぼやけて形を失い、霧の中に消えていくように思えます。
霧の中に見え隠れする桜、このぐいのみは「霧桜(きりざくら)」と名付けました。
また霧桜は切子で表現する桜、子を省略して切桜(きりざくら)でもあり、「霧」と「切」のダブルミーニングとなっております。
美しい桜はイメージとして見えているのに霧の中に消えていくようで、それでも消えないように桜を追い続ける、まるで人生のようです。
桜がそのまま幻になって霧の中に消えていくのか、自分の力でハッキリした桜を開花させるかは今後の自分次第です。