伝統的なデザインの傾向として、わりと四角形の格子の枠の中に何かのカットを入れるようなものが多いです。このデザインを作る前に伝統的なデザインのワイングラスをいくつか製作しておりましたので、デザインの方向性としては全体が流れるような線で構成されたものにし、他の作品とはまた違った味わいを感じられるものを作ろうと思いました。また直感的、アート的、女性的なデザインで切子らしさがあって、オリジナリティを感じて頂けるようなデザインを目指しました。まとめると・他の作品とテイストが違う曲線を多用する・直感的、アート的、女性的なデザインである・切子らしさがある・オリジナリティがあるという4つの要件を満たすものというところがポイントになっているかと思います。蕾と蕾の間には細い曲線のみで構成された伝統的な文様の矢来のようなデザインとなっています。切子らしさとはなんだろうと考えた時に原点回帰というかこの矢来のような線が折り重なっている状態のことではないかと考えました。また蕾の芯に当たる部分は消し加工により擦りガラス状に仕上げています。ワンポイント消し加工を入れると磨くだけでは表現できないグラスの品の良さを追加できると考えているので採用しております。口元は口当たりを良くするために半円状に薄く擦っております。口元が円ではなく、内側にへこんで波打っています。10パターンほど試しましたが、この半円状に擦った時に一番口当たりが良くなると断定したので、採用しております。全体はなめらかな曲線でやわらかい雰囲気に見えますが、上から覗いた時に対比として角ばった四角形が出る細工を仕込んでおります。グラスの構造とカットの見え方を理解していないと、最初から意図してこのようなデザインを構築することは不可能なので、腕の見せどころだったと思います。グレードを上げた型の中でもオリジナリティを盛り込んだ面白いデザインです。SNSでも高評価のコメントが付きました。よっぽど感銘を受けないとわざわざコメントをしてくれないと思いますので、なかなか良い仕上がりではないでしょうか。自分用、贈り物、祝い事、インスタ映え、お店のブランドイメージアップ等にご検討頂ければ幸いです。