暑い盛りの冷やしそうめん、凍えるような寒さの中で味わう鍋焼きうどんと、めんについてはたくさんの思い出がある。NHKテレビの仕事で山形県の「そば街道」を取材した。生まれてはじめてそばの花を間近に見て、その可憐な白い花に驚いたし、花芯の形のままの熟したそばの実を手にすることができた。清冽な水が湧くところにおいしいそばが誕生するのを実感し、そば粉をこねて切り分けるまでの所作も体験した。もちろん、おいしいそばの店で口福を味わったが、そばについては通人が多いので避ける。
うどんは香川県の丸亀ではじめて、かまあげうどんをおろししょうがと生醤油で味わい、目を丸くした。うどんもそばもさんざん紹介しているので、私は父と母の故郷である沖縄のそうめんについて語りたい。
沖縄にはうどんやそばの歴史はない。ただ、県民食とも言える沖縄そばは、本土でも食べられるようになった、郷土そばである。そばといっても小麦粉100%で木灰を加えて練り上げ、仕上げの段階で油をまぶす。本土のそばやラーメンとも違うもので種類は地域によって異なる。
私にとって故郷の味といえばそうめんだ。保存がきくので台風のなどに備えてどこの家庭にも備えてあるそうめんは、ゆでたものを炒めて食べる。私の母はねぎの刻んだものしか入れなかったが、ツナでも缶詰のポークでもなんでも入れる。これはは子どものころからよく食べた。また、もどしたものを結んだ挙げそうめんは、おやつや酒の肴にもなる。
(「めん」について想う 料理研究家 岸朝子 本書より抜粋)■内容
1.めん食文化と即席めん
国際食となった「めん食文化」/巨大な技術革新の系譜/ラーメンを生んだ「めん好き民族」/ラーメンは日本の発明品か/コメ、パンそして「めん」
2.即席めんの歴史
日本産業史における意味/時代の申し子として/長い行列に込められた膨大な潜在需要/開発の五条件/魔法のラーメン/続々参入する新規メーカー/知的財産権をめぐる争い/大同団結へ/製品強化の裏で業界淘汰/奇想天外の発想が生んだカップめん/沈滞打破した「カップヌードル」/準主食から国民食へ/沈滞破る生タイプ即席めん
3.即席めん市場の現状
地域別・月別生産量/1世帯あたりの消費支出
4.これからの即席めん
新たな可能性への模索/最近の技術動向/世界の食文化に貢献する国際食へ
5.即席めん類の製造方法
はじめに/めんについて/スープ(調味料)について/かやくについて/包装について/生タイプ即席めん
6.即席めん類等についての日本農林規格
即席めん類についてのJAS/生タイプ即席めんのJAS/即席めん類の生産量と分類
7.資料