弟子:ずいぶん気合の入った雑誌ですね。
師匠:かれこれ35年以上前に八方手を尽くして手に入れた貴重な品なんだよ。
弟子:ビートルズですか。
師匠:そうだね。お前には馴染みが薄いかもしれないね。
弟子:僕の年代だと完全にずれてますね。知った時にはジョンはいなかったし。
師匠:どうかすると教科書で知った年代だったりしてな。
弟子:何しろスゴイ方たちだったらしいじゃないですか?
師匠:60年代のありかたの全てを変えたと言ってもいいんじゃないか?
弟子:相変わらずの大げさぶりですね。
師匠:そう言っても誰も怒らないと思うよ。当時のロートル以外はね。
弟子:と言うと?
師匠:当時の大人はみんなビートルズが怖くて怖くて仕方なかったんだね。
弟子:当時って?
師匠:66年の来日公演を例にとった話でもいい?
弟子:いいよ。なんで怖かったの?
師匠:大人ってさ、自分の観念を超える新しいものは理解出来ないだろ?
弟子:まぁね。分かろうとしないというかね。
師匠:理解できない事は怖い。怖いから受け入れられない。
弟子:うん。
師匠:だから徹底排除にかかるワケ。現状維持がベスト。変化を嫌う。
弟子:いつでもどこの国でも似たり寄ったりなんでしょうね。
師匠:学校やPTAはビートルズやロックの全てを禁止。警察は補導に躍起。
弟子:そうなりますね。
師匠:文化人や有識者はビートルズを「こじき芸人」と蔑み、あんなキチガ……。
弟子:もういいです。もういいです。よく分かりました。
師匠:いつの時代も発言力のある大人が狭量なんだよな。
弟子:で、どうスゴかったんです?
師匠:ビートルズが日本に滞在した時間はわずか103時間だったんだよ。
弟子:うんうん。
師匠:その短い間でスーツの仕立て屋さんが14万儲けたね。
弟子:あはははははははは。そっちですか。
師匠:宿泊したヒルトンホテルの地下のおみやげ屋も相当だったろうね。
弟子:だーよーねー。
師匠:南青山の骨董店は500万儲けたらしい。
弟子:景気のいい話ですね。
師匠:短い間なんだけどおみやげ業者が何度となくホテルに行商に行ってるんだよ。
弟子:その業者になりたかったんですね。
師匠:ビートルズはインタビューもロクに受けないのにおみやげ屋だよ?
弟子:インタビューなんてもう飽き飽きなんでしょうよ。買い物で発散なんでしょうね。
師匠:Sgt.ペパーズの福助はこの時のお買い上げ品だそうだよ。
弟子:へぇ。
師匠:103時間中、観客は5万人。8000人以上の警官を導入。補導者は6,500人以上。
弟子:1966年ですからね。そりゃ大変なことですね。
師匠:あらゆる人を巻き込んであらゆる人に計り知れない影響を与えた。
弟子:うん。
師匠:わずか35分でだ。
弟子:はい?
師匠:ワンステージ35分でだ。
弟子:マジですか!!!
師匠:まだ街頭テレビの頃だからね。今のアーティストと比べちゃダメなんだけどね。
弟子:ほえー。
師匠:当時メンバーと同じ位の年の方だと現在は70歳を超えてるってのもスゴイよね。
弟子:ですねー。
師匠:ま、ビートルズに関して今更ワシが語ることなんか何もないよ。
弟子:語り尽くされてますもんね。
師匠:そう。好きな人は一人づつに自分だけのビートルズヒストリーがあるからね。
弟子:この商品はそんな方に……というワケですね。
師匠:今では販売自体が極めて珍しいこの商品を紹介したいと思うワケです。