【JAZZ】
MORE THAN FISHERMEN
ジョエル・レンメル・トリオ『澤野工房』
【PMM006】
Joel Remmel : piano
Heikko Remmel : bass
Eric Ineke : drums
北欧から届いた、珠玉の青春。抒情的に、瞑想的に広がる透明なピアノ・ミュージックの綴れ織り。若き日に置き忘れた、憧憬、哀しみ、希望、情熱…を期待のトリオが美しく奏でる
【収録曲】
1 Imeline nouandja2 Still Alive3 More Than Fishermen4 Maast lahti5 Jaanuari vihm6 Correction7 Lullaby8 Seitsme maa ja mere taga9 A Cat with a Short Tale
【ライナーノーツ】
1曲目のイントロのクラシカルな響きを聴いた瞬間、「これは良いアルバムに違いない」と感じた。「良い」には個々人の感性が反映されているから、それが逆に作用される方もままおられるとは思う。けれど、もしあなたが、筆者と同じく、透明感のある音像や、響きの美しさ、粒だった音の連なりやキレのある演奏、アルバム全体を統一するムードといった要素に「良い」を感じる聴き手であるなら、その期待は裏切られない。手に入れて損のないCDであることを保障してさしあげる。一応主人公はピアノのJoel Remmelなのだろうが、これはあくまでトリオがまとまっての作品であり、楽曲も含めて一作目であるLUMEKRISTALL以来の新しい作品集と見るのが正しい。実はJoelはサワノの看板アーティストであるTonu NaissooトリオのベーシストであるTaavo Remmelの息子で、二世代にわたるご縁なのだが、ベースのHeikkoはその兄弟、ドラムスのAleksandraはその…きっと…友人なのだと思う。何というか、このアルバムには、そんな若い彼らの一途な想いのようなものが詰め込まれている、と感じるのだ。添付のブックレッドにもそれは衒いなく示されている。ジャケットで語らう三人がとても良い雰囲気だ。そこには我々の帰り来ぬ日々にも確かにあった、希望や憧憬や情熱が一緒に留まっているみたいで、感傷を誘われてしまう。肝心の音楽だが、一作目に比べ、楽曲も演奏もぐっと進歩していると感じた。愛着する?も含め、時には瞑想的に、時には抒情的に展開する世界はまさに北欧の印象。何度も聴き返して、彼らの夢を共有したくなるだろう。こういう作品はありそうでない。青春の残影のような稀有の一枚。是非お聴き戴きたい。Text by 北見 柊