【JAZZ】
L’INEFFABLE
ジャン=フィリップ・ヴィレ・トリオ
『澤野工房』
【MEL666015】
Jean-Philippe Viret : bass
Edouard Ferlet : piano
Fabrice Moreau : drums
最高峰のトリオが描く、唯一無二の音世界。JEAN-PHILLIPE VIRETと、その仲間のみが創造し得る音楽の迷宮。
緊張と美に支配される、至福の瞬間を体験せよ。
【収録曲】
1.Tous contraints
2.Valence
3.Equivoque
4.Depart imminent
5.May be l’homme
6.Je suis un jeune homme
7.L’araignee
8.Echo
9.Laps
【ライナーノーツ】天才ベーシスト、VIRETと、その仲間による新作である。天才、と大きく出るわけだが、その表現に躊躇することがないのは、彼がリーダーとなって作り出す音楽の世界が、いつも他との比較を絶して独特で、かつ完成度が高いからだ。彼のトリオの登場以来、口(筆)を極めて絶賛してきたが、とてもその実力に知名度が追いついているとは言えない。過小評価とはこのことであるが、筆者の微力を思い知るところでもある。まだ聴いていない音楽好きに言いたいのはただひとつ、知らずにいることは、あなたにとって損失だと思うから、とりあえず一度その世界に触れてごらんなさいということ。遅きに失することはない。もちろん、この作品からでも良いのだから。
彼らの音楽はメロディとリズムという役割をトリオ・フォーマットの中で再構築して、三位一体で作り上げられる。お互いの音に耳を研ぎ澄ませ、反応しながら、しかも破綻することがない。個々の技量が抜群に高いからだし、固い結束があるからこそだ。FERLETのピアノもMOREAUのドラムスも素晴らしいのだが、とくにVIRETのベースはいつもながら凄い。ピッキングはもちろん、アルコ(弓弾き)における音程の確かさは超絶技巧の域と言って良い。
謎かけのようなタイトルでイメージをふくらませつつ、様々に舞い踊る音の迷宮に遊ぶひとときは、外では得られない快感だ。緊張感に支配されながら、奥深い美があり、それはひそかな抒情を隠している。唯一無二、ただ聴くべし。
Text by 北見柊
【録音年:2014年 発売日:2014.10.24】