【JAZZ】
PEACE PIECE
アーノルド・クロス・トリオ『澤野工房』
【AS120】
Arnold Klos : piano
Jos Machtel : bass
Eric Ineke : drums
3年ぶりに届いたアーノルド・クロスの気品ある旋律。
ビル・エヴァンスの名曲“PEACE PIECE”が暖かく,甘い香りを含んだ柔らかな春の風に乗って今ここに。
【収録曲】
1 Autumn Leaves
2 Detour Ahead
3 Israel
4 Pensativa
5 All Blues
6 The Shadow of Your Smile
7 The Opener
8 I.O.U.
9 Peace Piece
10 Night and Day
11 Via Solaris
12 Like a Band
13 How Deep is The Ocean
【ライナーノーツ】
アーノルド・クロスの3年ぶりの新作はクロスのオリジナルを3曲はさみ全編ビル・エヴァンスの演奏で知られる曲で占められている。
クロスがエヴァンスに多大な影響を受け、ときにその偉大さに苦しみながらも彼独自の世界を築きあげていることはクロスファンなら周知のことだ。こうして改めて彼の演奏を聴くと、エヴァンスのピアノは冬の朝のぴんと張りつめた空気のようにある種の拒絶を含んだ緊張感を感じさせる。(もちろんそこが魅力なのだが)対して、クロスのピアノには春の訪れを告げるどこか甘い香りを含んだ柔らかな風のようにすべてを受け入れる寛容さを感じる。
「Autumn Leaves」のうきうきするような展開、一転して「Israel」のクールな躍動感。「The Shadow of Your Smile」の甘いメロディ。エヴァンスの作品がクロスの手によって春を迎え次々と芽吹くかのようにイメージを変えていく。アルバムタイトルに冠した「Peace Piece」は、そんなエヴァンスの一瞬の安息のような作品だ。
彼が影響を受けた印象派のクラシックのようにゆっくりと静かに時が流れ心がだんだんと調律されていく。
クロスはこの曲を弾くことで時間を超えてエヴァンスに寄り添おうとしているのかもしれない。
TEXT BY 白澤茂稔
【録音年:2011年 発売日:2012.3.28】