川辺で釣りをする三人を描いた風刺画です。若干の荒天というか、風が強く曇り気味な辺りがイギリスらしい天気といえます。
こちらは19世紀にイギリスはロンドンの印刷会社、R・テイラー社(R.Taylor &Co)が新聞社から依頼を受けて、挿絵付き週刊新聞「ザ・イラストレイテッド・ロンドン・ニュース(The Illustrated London News)」1893年4月1日号の挿絵として手掛けた品物。オリジナルの銅版画が制作されたのは1890年で、作者はイギリスの画家ゴードン・ブラウン(Gordon Frederick Browne:1858-1932)。
作品名は「The Three Fishers」、つまり「三人の釣り人」となっています。このタイトル、1851年にイギリス人聖職者、チャールズ・キングスレイ(Charles Kingsley)が書いた同名の詩を基にしているものと考えられます。キングスレイ氏は牧師で、彼の作品も宗教的なテーマを前面に扱っているものが多いのですが、この詩も三人の漁師が生活の糧を得るために出港した先で嵐に遭遇し、命を落とす様子を詠っています。いわゆる「悲劇詩」に分類される作品。
対照的にこの作品では中年の男性と若いカップル、それぞれのんびりと川辺で釣りをする三人の人物が描かれています。オリジナルの詩とは似ても似つかない平和な描写になっているのですが、おそらくはユーモア交じりに元ネタの悲劇性を揶揄した風刺画と考えられます。
要するに「今週は大したニュースが無かった」という事なのでしょう。(因みに、裏面は名士や貴族の訃報欄となっています。)