師匠:今日は焼き物の素晴らしさを語ってみるかな。
弟子:手短にね。嫌われるからね。
師匠:さて、焼き物は言うまでもなく太古の昔からある。
弟子:そうですね。
師匠:………もし我々が最初の人類だったとする。
弟子:はい。
師匠:腹が減り動物を狩るために物陰に身を潜めるも、はや3時間。
弟子:早く狩りなよ。
師匠:それよりも水が飲みたい。あー、水が飲みたい。
弟子:用意しときなさいよ。
師匠:コップなどないし見渡しても百均もない。
弟子:そりゃないよね。川に行きなよ。
師匠:川に行ったってまたすぐに喉は渇くよ。
弟子:何かに汲んどけばいいじゃんか。
師匠:何かって何に?
弟子:何って…………。えーと、意外と難しいね……。
師匠:どんぐりの帽子くらいしかないよ。
弟子:ちっさ。
師匠:きのこの裏側ですくうとかか?
弟子:いやだー。ぬるぬるー。
師匠:木を切って椀にするくらいしかないけど、道具としての鉄がない。
弟子:だよねー。うーん、自然の中に“汲んでおけるもの”ってないね。
師匠:土をこねて乾かせばそれらしくなるけど……。
弟子:水を入れればまた崩れるしね。
師匠:でさ、お前ならこの「土をこねて乾した物」を焼いてみようと思うか?
弟子:思わないでしょうね。
師匠:ワシも思わない。
弟子:ですよね。
師匠:水入れて失敗してるわけだから全く別の方法を考えるだろうね。
弟子:我々は土器止まりの人間ってワケですね。
師匠:いや、土器は焼いてあるからさ。
弟子:じゃ、旧石器時代止まりか………。
師匠:だから焼き物は素晴らしいんだよ。
弟子:最初に焼いた人が素晴らしいんじゃないの?
師匠:そうじゃないんだよ。よく聞きたまえ。
弟子:はい。
師匠:土なんて基本的には世界のどこにでもあって火さえ起こせば焼ける。
弟子:うん。
師匠:こねて焼くだけの物なら誰にでも作れる。
弟子:うん。
師匠:造形も自由自在。
弟子:うん。
師匠:焼き物を使わない人間はいない。誰もが何らかの形で使っている。
弟子:うん。
師匠:食器にかぎらず工業分野でも利用されている。
弟子:うん。
師匠:日常品から美術品まで幅があることが許されている。
弟子:うん。
師匠:割れてしまう儚さまでもが容認されている。
弟子:そうそう。そうなんですよね。
師匠:そういう“物”って焼き物以外には存在しないんだよ。
弟子:熱く語りますね。そろそろ時間ですよ。
師匠:人類の最重要自然物は水。最重要造形物は焼き物と考えるが如何なものか?
弟子:はいはいそれでいいよ。ではそろそろ商品紹介してね。
師匠:これは日常品としての焼き物だよ。
弟子:シーンに応じて使い分けるのが楽しいですよね。
師匠:心を込めて作った料理や野の花が更に引き立つ。
弟子:そう思います。
師匠:窯に行って手に入れたとある作家さんの品だよ。
弟子:いつ行ったんですか?僕に黙って。いいなー。
師匠:あのな、陶芸家というのは大抵変わった人が多いんだよ。
弟子:楽しかったんですね。
師匠:そういうワケだから楽しいトゥアーにはならんな。
弟子:楽しかったんですね。
師匠:うん。
弟子:作家物って雰囲気がありますよね。
師匠:そこが作家物の良い所。売れる売れないとかではなく直感的に良い物を作っちゃう。
弟子:所有する喜びを感じ取れるっていうかなんていうか。
師匠:製品ではこうはいかないよね。
弟子:製品には会議が必要ですからね。
師匠:でも、製品には製品の良い物があるけどね。
弟子:僕、置き去りですか。ところで作家物ってことは一点物なの?
師匠:一点限りの物もあるし、同じ作品として複数点ある物もある。
弟子:なるほど。
師匠:作家さんが手作りで焼いているから大きさや形、紋様は微妙に違うんだよ。
弟子:そりゃそうだよね。
師匠:商品サイズの所に一点物か同等品のお届けかを記載するようにしとこうか。
弟子:それなら安心だね。